Q2:11 / RIEKOTAPE 04 — PLAY
屋外でギターを弾き語るRIEKO 2000.05.13 / OUTDOOR PERFORMANCE
2018.11指名手配犯の潜伏先から
同じ内容のテープ 約50本

FAKE DOCUMENTARY “Q” / 記録映像再検証

RIEKO

『RIEKO』は、失踪した歌手を扱った単話作品に見える。

謎の指名手配犯の部屋から見つかった、50本近くのビデオテープ。

映像の中でRIEKOは、音楽活動のシーンとプライベートなシーンとが映っていた。しかしそれらは時系列がぐちゃぐちゃに編集されていた。

時系列順にすることで、何か読み取れるのだろうか?

また、字幕や音声が極端に乱れる場面があった。本来の字幕や音声を解読することは出来ないのだろうか?

そうして浮かび上がる、一人の男。

彼はいったい何者で、何がしたかったのだろうか?

男の正体と真意に迫る。

記録を再生する
01 / 発見

潜伏先に残されていたもの

作品が最初に示すのは、RIEKOの失踪ではなく、十八年近く後に見つかった男の部屋だ。男の罪もRIEKOとの関係も語られない。ただ、部屋に残されたテープの量だけが異常さを伝えている。

発見当時の室内を描いた証言者のスケッチ
証言者によるスケッチ / 作中 01:28

指名手配中だった男性が、潜伏先のアパートで遺体となって発見された。

室内にはビデオテープが山積みにされ、証言者のスケッチには「50本くらいある」と書き込まれている。

残されていたビデオテープは
すべてが同じ内容だった

なぜ、一人の男が同じ内容のテープを50本近く所持していたのか。

02 / 日付

テープは、どんな順番でRIEKOを見せたのか

再生中の映像は年代を何度も行き来する。画面へ焼き付いた日付を時系列へ戻し、再生順にだけ現れる組み合わせと照らし合わせる。順番を変えると、素材の並びではなく、二つの記録系列が見えてくる。

03 / カメラの位置

誰かが、デビュー以前から彼女のそばにいた

日付順でまとまった私的映像には、撮られることを知っているRIEKOがいる。では、レンズの反対側にいた人物は、彼女からどれほど近い場所にいたのだろう。

室内のRIEKO
1999.01.10 / 室内
買い物帰りのRIEKO
1999.11.03 / 買い物帰り
カメラへ歌うRIEKO
1999.12.29 / カメラへ歌う
観測

真正面からの手持ち撮影。室内でもRIEKOはカメラを警戒せず、演奏後には撮影者と言葉を交わす。

盗撮者ではない。関係の名前は分からないが、生活の内側にいた人物である。

この人物は、RIEKOが有名になってから近づいたファンではない。少なくとも1999年1月から、彼女の日常と歌を記録していた。

04 / 字幕

聞こえる歌と、読めない字幕

歌詞そのものは耳で聞き取れる。ここで問題になるのは「何を歌ったか」ではなく、なぜ同じ言葉を示す字幕だけが壊れた姿で残っているのか、そして本当に元へ戻せるのかだ。

文字化け字幕が重なる1999年12月29日のRIEKO
1999.12.29 / 文字化け字幕の表示場面
音声

RIEKOがアコースティックギターを弾き、穏やかなメロディーで歌っている。

縺薙l縺悟ヵ縺後M譁ー蜿・蜿励↓…

「もっとうまくやってよ」
「バレてんだよ? バカじゃない?」
「気づかなければ私、幸せなままいられたのに」

UTF-8CP932として誤読文字化け逆変換
04 → 05 / 接続記録

ここまでで、確認できたこと

  1. 01

    2018年の発見指名手配中の男性の潜伏先から、RIEKOの映像を収めたビデオテープが約50本見つかった。

  2. 02

    日付の復元1999年の私的記録と、2000〜2001年の音楽活動は、別々の系列として日付が進んでいた。

  3. 03

    カメラの距離私的な場面でもRIEKOは撮影を受け入れている。レンズの反対側には、生活の近くにいた人物がいる。

  4. 04

    文字の復元壊れた字幕は歌唱中の歌詞と一致し、表紙の文字化けは「消された男」と読める状態へ戻った。

05 / 男の正体

撮影者と、2018年の指名手配犯

デビュー前の映像を撮った人物。私的記録と公式映像を編集した人物。同じ内容を約50本に増やした人物。そして、そのテープを潜伏先に置いていた人物。この四つの役割をつなぐ。

私的映像撮影者

1999年から生活の内側を撮影。

テレビ出演映像編集者

私的映像と公式映像を一本に編集。

発見されたテープ複製者

同じ内容を約50本まで増やした。

潜伏先のスケッチ所持者

指名手配中、潜伏先で全てを所持。

資料の移動経路

四人いたのか。それとも、一人だったのか。

撮影者編集者複製者所持者

資料の移動経路を、同一人物モデルと分離モデルで比較する。

本考察の採用モデル撮影者 = 編集者 = 複製者 = 指名手配犯

同一人物と考えれば、作中に登場しない協力者や、私的映像の受け渡しを追加せずに済む。

06 / 公的な説明

そばにいた人物は、「友人」とだけ呼ばれた

私的な映像には、RIEKOの生活と歌を間近で撮る人物がいる。雑誌記事には「友人がデモを送った」という説明があり、テレビ番組では川島英治がRIEKOの隣に座る。三つの記録を、関係の変化が見える順に重ねる。

私的映像のRIEKO
01 / PRIVATE

生活の内側

RIEKOはカメラを警戒せず、日常と歌を撮られている。撮影者は、少なくとも生活の近くにいた。

RIEKOの雑誌記事
02 / LYRICS

「僕」に残る喪失

「君はもういない」「僕のケイタイ鳴らない」。誰が書いたかは確定しないが、歌詞には喪失を語る「僕」が残る。

川島英治とRIEKOのテレビ出演
03 / PUBLIC

名前のない「友人」

デモを送った人物は「友人」とだけ紹介され、画面では川島英治がRIEKOの隣に座る。

次に見るのは、この差を生んだ人物の気持ちではなく、テープに残された編集操作だ。

07 / 編集操作

男は、RIEKOの記録に何をしたか

ここまで見つけた異常を、別々の謎として扱うのをやめる。時系列、字幕、音声、複製本数。すべてを同じ編集者が選んだ操作として並べる。

01順番を壊す
PAPAP

私的記録と公式映像を交互に衝突させた。

02文字を壊す
縺薙l縺悟ヵ…

読めないが、逆変換すれば戻る字幕を残した。

03音を壊す

デモテープの歌を、歌唱と判別しにくい異音へ変えた。

04同じ物を増やす
× 約50

同じ内容を、一本ではなく約50本残した。

偶然の劣化では説明しにくい。男は、RIEKOの記録を並べ直すのではなく、壊しながら反復した。

08 / 目的の絞り込み

保存でも、告発でもない

では、何のための編集だったのか。まず一般的な二つの目的と照合する。

A

保存したいなら

  • 日付順に整理する
  • 原本を読める状態で残す
  • 一本のマスターがあれば足りる
実際の編集と逆
B

告発したいなら

  • 字幕と音声を明瞭にする
  • 関係者や事情を説明する
  • 外部へ公開する
実際の編集と逆
C

行為自体が目的なら

  • 順番を壊す
  • 言葉と音を壊す
  • 同じ工程を何度も反復する
四つの操作が一本につながる
残る説明テープは誰かに理解させるための成果物ではない。
編集と複製を繰り返す行為そのものが、目的だった。
09 / シリーズ照合

Qにおける「繰り返し」

ここからは『RIEKO』単体の事実ではなく、Qシリーズを通して見た解釈になる。カードには、作品タイトルと、その作品で反復されるものを併記する。反復と大量複製は、これまでも異常が起こる直前に現れていた。

作品タイトル

幽霊と話せる電話番号

この作品で反復されるもの

電話の呼びかけと応答が何度も戻ってくる。

REPEAT
作品タイトル

オレンジロビンソンの奇妙なブログ

この作品で反復されるもの

崩れた女性画像が大量に生成される。

DUPLICATE
作品タイトル

ヘルタースケルター

この作品で反復されるもの

反復の果てに、儀式後を思わせる写真が残る。

TRACE
作品タイトル

リエコ - RIEKO

この作品で反復されるもの

同じ内容のテープが、約50本残されている。

× 50
対象の記録破壊・変換大量反復= 儀式の工程?

約50本は、男の情念を示すだけの小道具ではない。Q世界の反復則を『RIEKO』で実行するために必要だった本数・工程だった可能性がある。

浴槽内のチェック柄のシャツと日付が映る2001年6月29日の映像
作中映像 / 画面焼き付き日付 2001. 6. 29
時系列の終端 / LAST DATED RECORD

最後の日付の先に、
RIEKOの活動記録はない。

年月日を順に戻していくと、最後に残るのがこの浴室の映像だ。ここで見えるのは、日付と、浴槽の内側にあるチェック柄の服。その先の出来事は、映像の外へ落ちている。

画面で確認できること浴室/人物の一部/2001. 6. 29
画面だけでは言えないこと人物の身元・状態・事件との因果

この映像が残すのは、RIEKOの記録が途切れる地点と、2018年のテープ発見へつながる空白である。

10 / ここまでの観測

何を、何度も繰り返していたのか

ここまでの確認事項を、男の行動として一本につなぐと、次のような経路が見えてくる。

1999RIEKOの私生活
男は、そばにいた

RIEKOの生活と歌を撮影し、デビュー以前から支えていた。

2001川島とRIEKO
公の物語から、男が消えた

デモを送った人物は「友人」とだけ説明され、画面では川島がRIEKOの隣を占めている。

編集文字化け字幕が重なるRIEKO
記録を、壊した

私的映像と公式映像を混ぜ、順番・字幕・音声をそのままにはしなかった。

約50本ビデオテープ
同じ工程を、反復した

作中では、同じ内容のテープが約50本残されていた。

2001.06 / 2018発見当時の室内
二人の記録が、途絶えた

浴室の人物の状態や事件の因果は断定できない。ただ、RIEKOの活動記録は途絶え、男はテープとともに発見された。

資料だけでは埋まらない空白

保存したかっただけなら、なぜ順番・字幕・音を壊したのか。告発したかっただけなら、なぜ読めないまま、同じ内容を何十本も残したのか。

この空白を含んだまま、次の章で、確認済みの資料を最も多く説明する読みをまとめる。
11 / ここまでの資料を読む

四つの資料を、一本の行動として読む

ここまでに確認した四つの資料を重ねると、私的映像、公的映像、壊された記録、約50本のテープが、同じ人物の行動としてつながり始める。以下では、映っている事実と、そこから導く本サイトの読みを並べる。

1999年、室内で撮られたRIEKO
確認 01 / 私的映像

1999年から、男はそばにいた

買い物帰りの姿や部屋での歌が、撮られることを知った状態で残っている。盗撮ではなく、日常を記録し合う距離の映像だ。

1999.11.03 / 室内記録
2001年、川島英治と音楽番組に出演するRIEKO
確認 02 / 公的映像

公の画面に残るのは、別の物語だった

デモを送った人物は「友人」とだけ説明され、音楽番組では川島英治がRIEKOの隣に座る。私的映像との落差が見える。

2001.03.25 / TV音楽番組
文字化けした字幕が重なるRIEKOの歌唱映像
確認 03 / 編集操作

記録は、読める形のまま残されなかった

歌は聞き取れるのに、字幕だけが文字化けしている。日付と順番も崩され、音と文字がそのままの記録ではなくなっている。

1999.12.29 / 文字化け字幕
発見時の室内と約50本のビデオテープを描いた証言者スケッチ
確認 04 / 発見時の記録

同じ内容のテープが、約50本あった

証言者のスケッチにはテープの山と「50本くらい」と残る。作中は、どのテープにも同じ映像が記録されていたと説明する。

2018.11 / 証言者によるスケッチ
活動記録の終端2001年以降、RIEKOの活動記録は確認されない。浴室映像の人物の状態や、事件との因果までは断定できない。
本サイトの本命解釈

消された男は、RIEKOを消し返した。

最少人数モデルでは、撮影者・編集者・複製者・指名手配犯が同一人物になる。その男が、私的なRIEKOと公的なRIEKOを衝突させ、順番・字幕・音声を壊し、同じ工程を反復した。この一連の編集は、保存でも告発でもなく、消された相手をさらに消し返す「復讐儀式」だった――というのが、本サイトの本命解釈である。

資料から確定できないこと

撮影者と指名手配犯が本当に同一人物か。川島氏をめぐる事件があったのか。浴室の映像が何を意味するのか。いずれも作中では確定していない。「復讐儀式」は、これらの空白を含んだまま、確認済みの資料を最も多く説明する本サイトの解釈である。

テープを巻き戻す